上田市街地、上田城址公園近くの北国街道の面影を残す街道筋に建つ和田龍酒造。1887(明治20)年の創業以来、日本酒醸造に勤しんできましたが、戦後、地域の酒蔵が集約されてからは、他蔵で醸造した酒を桶買いし、瓶詰めして販売してきました。江戸時代から全国各地で行われてきた商法ですが、戦後の米不足もありこの時期にも各地に広がりました。
その後、現在の代表取締役である和田澄夫さんが自社醸造を復活させようと動きはじめたとき、税務署に預けていたと思っていた和田龍独自の酒造免許が実は返納になっていたことを知るのです。新規で日本酒の酒造免許が取得できることはほぼありません。そこで親戚筋の酒蔵に自ら入り製造に携わるようになったのが、現在の代表銘柄「和田龍」「和田龍登水」です。
その酒質は、やわらかく、優しく、穏やかで誠実。それは和田さんのお人柄そのものです。和田さんと出会った方は必ずその人柄のファンになり、和田さんの造ったお酒を飲みたくなる。飲むと和田さんの笑顔が思い浮かんでホッと幸せな気持ちになり、明日も頑張ろうと思うのです。酒蔵復活までの道のりも含めて幾多の困難がありましたが、そのお人柄もあって、困難に見舞われても私を含め和田さんを尊敬している方が全国にたくさんいて、応援しているのだと思います。
和田龍登水には、蕎麦が良く似合います。蕎麦前でだし巻き卵や板わさを頼み、和田龍登水の冷酒をいただく。〆の信州蕎麦に和田龍登水のぬる燗を。これがすばらしく合う。とくに更科系はたまらない。和田さんは、蕎麦と和田龍登水のベストマッチのために研究を重ね、そのペアリングに情熱を注いでいます。
(画像は和田龍酒造様よりご提供いただきました/無断転載禁止)