西飯田酒造店「積善」|長野市

江戸末より、犀川のほとりの善光寺平に位置する酒蔵。地元の米、地元の水を用いるまさに地酒を醸す酒蔵ですが、特徴はなんといっても県内唯一の花酵母の使い手であることです。東京農大花酵母研究会の所属蔵が全国で花酵母の酒を醸していますが、そのなかでも花酵母での酒造りに注ぐ情熱はトップクラスです。


現在、社長に就任した九代目の一基さんが蔵に入った当初、店に営業に来てくれたときに「自分が造ったお酒ができたら持ってきて」と伝えました。1年後、彼は無言でできたお酒を差し出しました。そのお酒がすごく美味しかったので、「よろしくお願いします」と頭を下げたら、彼はその場で号泣。あとで聞いたら、一年間本当に頑張ってきたのでそれが認められてうれしかったとのこと。真面目で誠実。あのときのシーンを今でもよく思い出しては、今でも変わらないそのまっすぐさに惹かれます。私と同じ4月1日生まれ。そんなこともあって、お互い何かを感じ惹かれあっているところもあるかもしれません。

 

アンニュイな風貌に、ややはにかんだ話しぶりの一方で、自身が求める良い酒に向かって内に秘める闘志はものすごいものを感じます。その内側からガンガンと攻める姿勢は酒のラインアップにも如実に反映されていて、正統派の食中酒が主力と思いきや、バナナを想わせる唯一無二の味わいのものや、貴醸酒など、幅広く挑戦しています。彼の醸す個性的な酒は賛否が分かれるかもしれませんが、日本酒が日本にとどまらず、今後ますます世界中で飲まれるようになった時、積善はキラ星のごとく輝くだろう。そう思わせる大きな力を持った蔵元です。





昭和59(1984年)年度生まれの長野県内の酒蔵の跡取り5人で作るユニット「59醸(ゴクジョウ)」のメンバーであり、そのなかでも個性派といっていい存在。互いに切磋琢磨するなかで、それぞれが年々良い酒を造るようになっていって、それは積善にも反映されています。

(ボトル画像3点は西飯田酒造店様よりご提供いただきました/無断転載禁止)