1900(明治33)年創業、他蔵にさきがけて速醸酛の導入や吟醸酒を発売するなど、進取の気性に富んだ酒蔵です。現在、代表取締役を務める土屋聡さんも、その血筋を色濃く受け継いだ蔵元と言えます。初めて出会ったのは、彼が20代の頃。頭の回転が速く、酒蔵経営のセンスや最先端の酒質を先取ることに長けていました。
しかし、僭越ながら、若さゆえか酒に対する想いがあまり感じられず、良い酒、美味しい酒を造るのですが、土屋さんが目指す酒というものが見えてこない。いつも本音でそのような話をしていたこともあって、彼は私のことが苦手だったかもしれません。弊店を含む3店の酒販店で企画する信州地酒頒布会にもなかなか声をかけられずにいました。
しかし、久しぶりに蔵を訪れた時に、彼が杜氏さんはじめ蔵人さんをとても大切にしている姿、蔵人さんが土屋さんを尊敬の眼差しで見つめる姿を目の当たりにし、土屋さんの成長と何かを掴んだ自信を感じました。そして、すぐにお願いした信州地酒頒布会で、初登場グランプリに輝き、2年後にまたグランプリと快進撃が続いたのです。
現在の土屋酒造店の酒は、日本酒愛好家の評価の高さは言うまでもなく、初めて日本酒を飲む方にご案内すると間違いなくリピーターになってくれます。これまで日本酒を飲まなかった人にも裾野を広げる「0→1運動」においても大きな貢献をしてくれる酒。飲むと蔵人や蔵の風景を感じることができる、真心がこもった酒なのです。
(写真は土屋酒造店様よりご提供いただきました/無断転載禁止)